海渡 雄一(共謀罪NO実行委員会)
共謀罪NO実行委員会の海渡です。主催者を代表して開会挨拶を申し上げます。共謀罪法案の審議が危機的な状況です。法案は審議を進めれば進めるほど、その危険性が明らかになってきています。組織犯罪集団の関与が要件とされていると言われますが、環境団体や人権団体も対象になりうると説明しています。今日は法務大臣に対する問責決議案により審議は止まっていますが、政府は、法案を今週中に成立させると宣言しました。私たちは、このような暴挙を絶対に認めることはできません。
国際社会も日本の人権状況に深い関心を寄せています。日弁連は9日カナタチ氏とスカイプで結んで1時間半のロングインタビューシンポジウムを行いました。法案は、刑罰法規の明確性の原則を満たしていない、法案は、国民に対する監視を強めることにつながる、にもかかわらず、プライバシー保護のための法的な措置がないと指摘しています。
デビッドケイ氏は12日人権理事会で演説し、政府がメディアに圧力を加え、表現の自由が脅かされていると指摘しました。日本の人権状況に注意信号が点滅しているのです。
共謀罪法案は、もともと2003年に外務省と法務省が国連越境組織犯罪防止条約批准のために立案したものでした。当時、この法律は、国内に立法事実はなく、制定しても、使う予定はないと説明されていました。当時の官僚は本当にそのように考えていたのでしょう。
しかし、状況は一変しました。いま、この法案を推進しているのは、明らかに官邸です。森友学園、加計学園問題への対応に明らかなように、安部政権はますます独裁政権の様相を呈し、また、この法案は、安部首相はオリンピックのテロ対策のために必要だとしています。前川前次官のスキャンダル報道を見れば明らかなように、与党政治家も、高級官僚も、公安警察の監視の下に置かれ、黙らされているのです。
市民活動への弾圧の武器となることが危惧される組織的威力業務妨害罪や組織的強要罪の共謀罪は、2007年の自民党小委員会案では、削除されていました。いま、安部政権は、これを絶対に削除しようとしません。いまや、共謀罪法案は、政権中枢を支配する公安警察による、市民に対する弾圧の道具にする明確な意図があると断ぜざるを得ません。
カナタチさんは、この共謀罪法案は、手綱も鐙(あぶみ)もなしに馬に乗ろうとするものだ、このままでは必ず落馬するから、緊急の公開書簡を送ったのだと説明されています。そして、日本には警察と秘密情報機関に対する独立した監視機関が必要であると勧告しています。とても大切な指摘です。
日本政府は人権理事国に選出される際に、特別報告者と誠意を持って対話することを誓約しています。菅官房長官の発言は、自らの誓約にも反する、恥ずべき発言です。
9日のインタビューの最後に、カナタチさんは、「この闘いは始まったばかりなのだ、日本国民には人権保障を受ける権利がある。息の長い取り組みが必要だ」と述べました。そのとおりではないでしょうか。
私たちは、今週中の強行採決を食い止めるために、最後まであきらめることなく、持てる力のすべてをかけて闘わなければなりません。そして、共謀罪の目的が、異議申し立てをする市民を萎縮させ、黙らせることだとすれば、私たちが絶対に黙らないことこそが抵抗の核となります。どんなことが起きても、私たちは必要な発言をやめない、必要な活動をやめないことをこの場で誓い合おうではありませんか。
危機に瀕する、この国の、基本的人権をまもり、民主主義を回復するために、私たちは、この国の主権者として確信を持って共謀罪に反対する、あらゆる活動を、最後の最後まで続けていこうではありませんか。それでは、元気よく集会を始めていきましょう!